PLAは防水?石鹸置きやシャワーアクセサリーのプリント
結論:PLAは「耐水性」であっても「防水」ではありません
この違いは重要です。
PLAのプリント品は、たまに水しぶきがかかる程度や、花瓶として一時的に水を溜める、あるいは屋内用のプランターとして数ヶ月使用するといった用途には耐えられます。しかし、持続的な水との接触、特に石鹸を使う浴室のようなアルカリ性環境の温水では、多くの人が予想するよりも早く劣化します。「状況による」という曖昧な言葉ではなく、実際の研究データが示す事実を見ていきましょう。

吸水率:数値で見る事実
ASTM D570標準試験(23°Cで24時間浸漬)において、PLAは重量の0.5%から1.0%の水を吸収します。わずかな量に思えるかもしれませんが、他のフィラメントと比較するとその差は歴然です。
| 素材 | 24時間吸水率 | 8週間浸漬後の重量増加 |
|---|---|---|
| PLA | 0.5–1.0% | 2.5% 増加 |
| PETG | 0.12–0.2% | 0.3% 増加 |
| ABS | 0.2–0.4% | 約 0.5% 増加 |
| ASA | 0.2–0.3% | 約 0.4% 増加 |
Polymers誌(2021年)に掲載された査読付き研究では、蒸留水に9週間浸したPLAとPETGをテストしました。8週間後、PLAは重量が2.5%増加したのに対し、PETGはわずか0.3%でした。同一条件下で、PLAはPETGの約8倍の水を吸い込むことになります。
この吸水の大部分は最初の3〜4日間で発生します。その後、素材が飽和状態に近づくにつれて速度は落ちますが、ダメージが止まるわけではありません。ポリマー内部に浸透した水分子は「加水分解」を通じて分子鎖を切断し始めます。このプロセスは温度とpHによって加速されます。
他の素材との詳細な比較については、ABS vs PLA 比較ガイドをご覧ください。
温度がすべてを変える
PLAのガラス転移温度(Tg)は55°C〜60°Cです。この閾値を下回っている間、ポリマー鎖は硬くガラスのような状態で固定されています。しかし、これを超えると分子が動き出し、素材は軟化・変形し、劣化が急速に進みます。
ACS Applied Materials & Interfacesの研究では、PLAを異なる温度の水に49日間浸漬した結果を数値化しています:
| 水温 | 49日後の残存質量 | 状態の変化 |
|---|---|---|
| 37°C (体温程度) | 88% | ゆっくりと着実に劣化。数週間で機械的特性が低下し始める。 |
| 60°C (Tg付近) | 47% | 急速な加水分解。質量の半分以上を消失し、即座に変形が始まる。 |
| 80°C (Tg以上) | 4% | ほぼ完全に崩壊。断片のみが残る。 |
一般的なシャワーの温度は38〜42°Cです。これは「壊滅的」ではありませんが「低速劣化」ゾーンに属します。もし石鹸置きが熱いお湯の溜まりやすい場所に置かれていた場合、表面温度は50°C近くに達し、劣化を大幅に早めます。
見落とされがちな「石鹸」の問題
温度だけでなく、pH(酸性・アルカリ性)も石鹸置きなどの用途では致命的な要因となります。
固形石鹸は通常pH 9〜10のアルカリ性環境を作り出します。2021年の研究では、37°Cで25日間、異なるpHレベルでのPLAの劣化を測定しました。
| pHレベル | 環境の例 | 引張強度の損失 (25日間) |
|---|---|---|
| pH 7.4 (中性) | 水道水 | 約 25% |
| pH 10 (アルカリ性) | 石鹸水 | 40% |
pH 10の環境では、PLAはわずか25日間で引張強度の40%を失いました。表面には微細な孔が発生し、脆さが28%増加しました。つまり、PLA製の石鹸置きは「温水 + アルカリ性」という、PLAにとって最悪の組み合わせにさらされているのです。
耐水性を高めるプリント設定
水に触れる用途でPLAを使用する場合、設定が寿命を左右します。以下の設定を推奨します。
- 壁の数(Perimeters): 最低4層(重要なパーツは6層)。
- 積層ピッチ: 0.15mmが最適。層間の密着性が高まります。
- インフィル: 50%以上(浸水を防ぐには100%が理想)。
- 押し出し倍率: 105–110%に設定し、わずかに過剰押し出しをすることで微細な隙間を埋めます。
- ノズル温度: 通常より5〜10°C高く設定し、層間の接着を強化します。
Q2のようなロードセルによる自動レベリング機能を備えたプリンターを使用すると、防水に不可欠な「完璧な1層目」を安定して出力できます。
効果的なコーティング方法
最も確実な防水方法は、水がPLAに直接触れないようにすることです。
- エポキシ樹脂(最適): 2液性のエポキシは、完全硬化後に非多孔質で化学薬品に強い強力なバリアを作ります。
- ポリウレタンスプレー: エポキシより耐久性は劣りますが、手軽に施せます。
- 注意: アセトン蒸気による平滑化はPLAには効果がありません(PLAはアセトンに溶けません)。
PETGに切り替えるべきタイミング
以下のような場合は、PLAの防水加工に苦労するよりも、最初からPETGでプリントすることをお勧めします。
- 週に何度も水に濡れる場合
- 水温が40°Cを超える場合
- 石鹸や洗剤を使用する環境
- 屋外(紫外線 + 湿気)での使用
PETGは吸水率がPLAの8分の1であり、ガラス転移温度も80〜85°Cと高いため、シャワーの熱にも余裕で耐えられます。素材の価格差はごくわずかです。水耕栽培用ガイドでも、水回りにはPETGやASAが推奨されています。
よくある質問
PLAで花瓶を作れますか?
はい。壁を4層以上にし、0.15mmの積層ピッチで出力すれば数日間水を保持できます。ただし、長期間の使用では徐々に浸透していくため、一時的な使用に向いています。
PLAはお湯で溶けますか?
溶けるのは約160°Cですが、55〜60°Cで軟化し始めます。熱い水道水で変形する可能性があるため、注意が必要です。
プランターにPLAを使っても大丈夫ですか?
屋内用であれば数年は持ちますが、屋外だと日光(紫外線)と雨により数ヶ月で脆くなり、色あせます。屋外用にはPETGやASAが適しています。詳細は水槽でのPLA使用ガイドも参考にしてください。
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