家具の滑り止めに最適:カスタムTPUフットの製作
フェルトパッドがすぐにダメになる理由
フェルトパッドの役割は「床の保護」と「外れないこと」の2つです。しかし、粘着剤が限界を迎えるまでの寿命はせいぜい60〜90日程度。粘着層に髪の毛やホコリ、砂などが溜まるとパッドは剥がれ落ち、誰かの靴下に張り付いてしまいます。そして、気づけば椅子の脚がむき出しになり、フローリングを傷つけることになります。
また、フェルトは滑り止めにはなりません。ハードウッド(硬木)の上での摩擦係数が低いため、人が座ったり立ったりするたびに椅子が動いてしまいます。カーペットの上なら問題ありませんが、フローリングやタイル、ラミネート床では、食事のたびにダイニングセットの配置がバラバラになってしまいます。
TPUはこの両方の問題を解決します。摩擦係数が0.70〜0.90(フェルトやプラスチック製の2〜3倍)と高いため床をしっかりグリップし、脚に機械的にフィットさせる(かぶせる)設計にすれば脱落することもありません。耐久性も抜群で、数年間は摩耗しません。私がダイニングチェアにTPU製の脚キャップを取り付けてから18ヶ月経ちますが、今でも取り付けた日と同じ状態を保っています。
摩擦係数の圧倒的な差
| 素材(フローリング上) | 摩擦係数 | 滑りにくさ |
|---|---|---|
| プラスチック製グライド | 約 0.30 | 低い(よく滑る) |
| フェルトパッド | 約 0.35 | 低〜中程度 |
| TPU 95A | 0.70–0.80 | 高い |
| TPU 85A | 0.80–0.90 | 最高 |
TPUが柔らかい(ショア硬度の数値が低い)ほど、床表面の微細な凹凸に素材が馴染むため、グリップ力が増します。85Aは吸盤のような密着感を生むほど変形します。ただし、引きずって使う椅子の場合は、85Aは95Aよりも摩耗が早くなります。日常的に動かすダイニングチェアには、グリップと耐久性のバランスが良いTPU 95Aが最適です。本棚やサイドテーブルなど、動かさない重い家具には85Aが適しています。
椅子の脚の測り方
椅子をひっくり返し、ノギスを使って脚の底面の断面を測定します。一般的なサイズは以下の通りです:
| 家具の種類 | 一般的な脚のサイズ | 形状 |
|---|---|---|
| ダイニングチェア | 19–25 mm | 丸または角 |
| オフィスチェア(キャスター軸) | 10–11 mm | 丸 |
| テーブルの脚 | 32–50 mm | 丸、角、または長方形 |
| 金属チューブ家具 | 20–25 mm | 丸パイプ |
最も一般的な「キャップ型」を設計する場合、測定値に0.2〜0.4mmのクリアランス(ゆとり)を加えます。TPUには柔軟性があるため、多少きつくても押し込むことができます。0.5mm程度の余裕があっても、素材自体のグリップ力でしっかり保持されることが多いです。
重くてひっくり返せない家具の場合は、紙を脚の底に押し当てて鉛筆で型を取り、それを測定する方法もあります。ノギスほど正確ではありませんが、柔軟なTPUなら許容範囲に収まります。
デザインのバリエーション
キャップ型(圧入式)
脚の末端にかぶせるカップ状のタイプです。TPUの壁面がわずかに伸びて脚を締め付けるため、粘着剤なしで固定されます。テーパー(先細り)形状の脚の場合は、内側のプロファイルをその角度に合わせないと、キャップがガタつく原因になります。
カップ型(置くだけ)
重い家具に向いている、上部が開いたカップ状のタイプです。家具自体の重さで固定されるため、完璧にフィットさせる必要がなく、掃除の際の取り外しも簡単です。ただし、持ち上げて移動させる軽い椅子には向きません。
粘着式パッド
TPUで平らなディスクをプリントし、両面テープ等で貼り付けるタイプです。設計とプリントは最も簡単ですが、結局は粘着力に依存します。市販のフェルトよりは厚みがあり丈夫ですが、最終的には剥がれる可能性があるため、キャップ型が使えない特殊な形状の脚にのみお勧めします。
設計のヒントや公差については、同じ圧入の原理を解説した交換用ノブの設計ガイドが参考になります。家具全般の3Dプリントプロジェクトについては、家具プリントのオーバービューをご覧ください。
TPU脚キャップのプリント設定
- 積層ピッチ: ボディ部分は0.2mmで十分ですが、床に接する面が最も重要です。
- 底面レイヤー: 5〜8層のソリッドレイヤーを設定してください。接地面を厚くすることで、より滑らかで均一なグリップが得られます。
- インフィル(充填率): 30〜50%。荷重を均等に分散させるため、コンセントリック(同心円状)パターンが推奨されます。
- 速度: 95Aなら30〜50 mm/s、85Aなら15〜25 mm/sの低速で。
- 温度: ノズル 220–240°C、ベッド 50–60°C。
接地面がビルドプレート側に来るようにプリントしてください。ビルドプレートに接した面が最も滑らかに仕上がり、床を傷つけにくくなります。キャップの内側(椅子の脚に触れる部分)の積層跡は、むしろ脚との摩擦を強めて脱落防止に役立ちます。
QIDIのQ2は、ダイレクトドライブエクストルーダーと加熱チャンバーを備えており、TPU 95Aを非常に安定して出力できます。便利な生活雑貨のプリントアイデアでも、TPUは多くのプロジェクトで活躍します。
ダウンロード推奨のパラメトリックモデル
特殊な形状でない限り、ゼロからモデリングする必要はありません。以下のモデルは、数値を入力するだけで自分の椅子のサイズに合わせたデータを生成できます:
- Chair Leg Pads Collection by Lucandia (Printables) — 丸脚・角脚両対応のパラメトリックデータ。
- Table Leg Foot Generator by SteveS42 (Printables) — スライダーでサイズ調整可能なOpenSCADモデル。
一脚分(4個)のTPU使用量は約20〜30gで、コストにすると100円もしません。市販のTPU製キャップを買うよりもはるかに安上がりです。その他のTPUプロジェクトとしては、精密なフィットが必要なスマホケースガイドや、より複雑なコスプレ用防具ガイドも参考になります。素材の購入はフィラメントコレクションをご覧ください。
よくある質問
TPUの脚キャップは床に跡を残しますか?
いいえ、TPUはフローリングに跡を残さない素材です。天然ゴムのような黒い擦り跡はつきません。また、ビニール製床材(クッションフロア)に対しても安全です(天然ゴムは可塑剤の移行反応によりビニールを変色させることがありますが、TPUはその心配がありません)。
寿命はどのくらいですか?
動かさない家具なら3〜5年以上、毎日引きずるダイニングチェアでも95Aなら1〜2年は持ちます。もし摩耗しても、数十円のコストと30分程度のプリント時間ですぐに新品に交換できます。
カーペットの上で使う椅子にも使えますか?
カーペットの上でTPUを使うと摩擦が強すぎて、椅子が全く動かなくなります。デスクから椅子を引くのが困難になるため、カーペット敷きの場合はプラスチック製の滑りやすいグライドやキャスターをお勧めします。TPUはあくまで「滑りすぎて困るハードフロア」用です。
Q2
Plus 4
QIDI Box
Q1 Pro
X-Max 3