サイクリスト向けカスタムGoProマウントのプリント
GoProマウントのインターフェース
GoProは、2本と3本の「フィンガー」を噛み合わせるインターフェースを採用しています。カメラ本体の底面には2本のフィンガーがあり、マウント側の3本のフィンガーと噛み合います。そこにM5のサムスクリューを通すことで、全体が固定される仕組みです。
プリント時に重要な寸法は、フィンガーの幅が約3.0mm、フィンガー間の隙間が3.1〜3.5mm、そしてネジ穴の直径が5.0mmです。
既存のSTLファイルをプリントする場合、重要な公差はすでにモデルに組み込まれています。まずはフィンガー部分だけをテストプリントしてみることをお勧めします。もしきつすぎる場合は、スライサー設定で「水平外形拡張(Horizontal Expansion)」を-0.1〜-0.15mmほど調整してください。逆に緩すぎる場合は、フィンガーを軽くヤスリで削って調整します。Printablesなどのサイトのモデルでも、多少の現物合わせが必要になることは一般的です。

自転車用マウントの種類
ハンドルバーマウント
ハンドルバーに直接クランプするタイプです。標準的なロードバイクの径は31.8mm、古いバイクやBMXは25.4mmが一般的です。前方を低い位置から撮影でき、振動も比較的抑えられるため、ロードバイクでは定番の選択肢です。M4ボルト2本で固定するデザインが多く見られます。
ステムマウント
ステアリングコラムのステム部分やスペーサーに取り付けるタイプです。ハンドルバーマウントよりも中心に近い視点になり、見た目もスッキリします。安定したタイムラプス撮影などに適しており、ボルトや結束バンドで固定します。
Garminコンボマウント
私が最も多用しているタイプです。既存のGarminサイクルコンピューター用のアウトフロントマウントの下側に、GoProインターフェースを追加するものです。ハンドルバーのスペースを節約でき、コンピューターの真下にカメラがぶら下がる形になります。
サドルレールマウント
サドルの下にあるレールに結束バンドやボルトで固定します。後方を向けて撮影でき、後方からの接近車両に対するドライブレコーダー的な役割を果たします。サドルの振動はハンドルよりも激しいため映像は乱れがちですが、安全のための記録としては非常に有用です。
なぜPLAではなくPETGなのか
自転車用マウントにPLAを使うのは間違いです。PLAは硬い反面、繰り返しの荷重に対して「脆い」という欠点があります。走行中の道路の振動は連続的な高周波の疲労ストレスとなります。PLAは積層境界に微細な亀裂(マイクロクラック)が生じやすく、ある日突然、予兆なく真っ二つに割れてしまいます。時速35kmで走行中にマウントが壊れると、カメラの紛失だけでなく、後続車への危険も伴います。
PETG は、実用的なデフォルトの選択肢です。PETGは破断する前に「変形」するため、突然壊れる前に「マウントが曲がってきた」という視覚的な警告を与えてくれます。また、PLAよりも耐候性(UV耐性)に優れており、夏の直射日光の下に駐輪していても耐えられます。FDMパーツはZ軸方向の強度がXY平面に比べて弱くなる傾向がありますが、PETGは層間の密着性が高いため、より過酷な環境に適しています。
さらに防振性を高めるには、マウント本体をPETGでプリントし、ハンドルバーとの接触面にTPU製のブッシュやワッシャーを追加するのが効果的です。TPU 95A を2mm厚のガスケットとして挟むだけで、カメラに伝わる不快な振動を大幅に軽減できます。これはドローンレーサーがカメラマウントで行っているのと同じ手法です。
路面振動への対策
振動は、マウントの疲労破壊と映像のブレという2つの問題を引き起こします。
マウントの寿命を延ばすためには、特にボルト穴やGoProフィンガー周辺の壁の数(外周レイヤー数)を少なくとも4層以上に増やし、インフィルは40〜60%に設定してください。また、応力が集中する内側の角にはすべて「フィレット(丸み)」を追加しましょう。鋭角な角は、クラックが発生する起点になります。
映像品質については、GoPro内部の手ブレ補正(HyperSmooth)が強力ですが、マウントを剛性の高いPETGボディにし、接触点にTPUを配置することで、細かな微振動を物理的にフィルタリングし、より安定した映像を得ることができます。マウント全体をTPUで作ることも可能ですが、それだと剛性が足りず、走行中にカメラが重みでお辞儀してしまうため、ハイブリッド構成がベストです。
プリント設定と向き
自転車用マウントでは、プリントの向きが非常に重要です。クランプによる締め付け力や振動に耐える向きを考慮してください。
- クランプの力が積層を引き裂く方向ではなく、積層面(XY平面)に沿ってかかるように向きを調整します。
- GoProフィンガーは、サムスクリューのせん断力に対して層が平行になるように配置します。
- 壁(外周):4層以上、インフィル:50%以上、積層ピッチ:0.2mm。
- PETGの設定:ノズル 235–245°C、ベッド 80°C。層間密着を高めるため、Q2のような加熱チャンバーを備えたプリンターでの出力が理想的です。
- 反りを防ぐため、底面の接地面積が広い部分には「ブリム」を使用してください。
さらに強度を最大化するには、PETGの推奨温度域の上限でゆっくり(40〜50 mm/s)プリントしてください。フィラメントコレクションには、バイクのカラーに合わせられるよう、様々な色のPETGが揃っています。
必ずテザー(命綱)を使用すること
3Dプリントしたマウントは、いつか壊れる可能性があると考えてください。GoPro HERO12は約154gあります。時速40kmで走行中にこれが落下すれば、後続車や他人の車輪に飛び込む危険な飛び道具になります。
GoProのサムスクリュー部分から、バイクのフレームやハンドルバーに安全用のテザー(ワイヤーなどの命綱)を繋いでおきましょう。数百円で買える数本入りのスチールワイヤーで十分です。数万円のカメラを失わないための、最も安い保険です。
同様の保護設計の考え方は、TPUスマホケースガイドでも解説しています。また、キャンプギアの記事でも、屋外での使用に耐える耐久性について触れています。柔軟なマウント設計に興味があるなら、TPUコスプレ防具ガイドも参考になります。
よくある質問
PETG製のマウントは落車(クラッシュ)に耐えられますか?
おそらく壊れます。しかし、それは実は望ましい挙動です。マウントが身代わりになって壊れることで、自転車本体やライダーへのダメージを軽減するからです。カメラはテザーが守ってくれます。帰宅してから100円程度のコストと90分のプリント時間で予備を作ればいいだけです。これこそが自作の最大の利点です。
GoProフィンガーの公差はどのくらいが適正ですか?
カメラがガタつかない程度にきつく、かつ手で抜き差しできる程度に緩いのが理想です。まずはSTLファイルのままプリントし、きつすぎる場合はスライサーで調整しましょう。最終的にはサムスクリューで締め付けるので、多少の余裕があっても問題なく固定できます。
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